近くへ行きたい

晩夏

夏が涼しいと言われている北海道で、その夏もとうに終わっているはずなのに、気温はいっこうに下がらず、湿度も妙に高く、導き出される言葉は毎年一緒な気がしつつも、こう唱える。「地球がどこかおかしい」
あまりに暑かったので、水の多い場所へ行ってきた。

屈斜路湖

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網走から南へ直線距離にしておよそ50kmにある屈斜路湖は、日本最大のカルデラ湖。何度か来たことはあるけど、ゴールデンカムイを読んだ後で訪れるのは初めてで、巡礼感も加わってか、見える景色がどことなく以前とは異なる。
たとえば、湖畔の砂湯にある、売店とレストランと貸しボート受付を兼ねる建物の「レタラチップ」という名前も、今ならアイヌの言葉で白い船を意味することは容易に思いつく。レタラはアシリパさんと一緒にいた白いエゾオオカミの名前。

アトサヌプリ

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網走監獄を目指す杉元たち一行と交戦した脱獄囚・都丹庵士たちがかつて労役に遣わされ、失明の原因になったアトサヌプリ(硫黄山)も近い。現在は麓より上には登れなくなっているけれど、立ち入れる範囲内に、硫黄の結晶や噴煙口から噴き出す煙を間近で見られる場所もある。こんなところに長時間いたらそりゃ具合も悪くなるし失明もするだろうよという強烈な臭いは、嗅いでて本当に気分が悪くなるし、目も痛くなる。風向きがちょっと変わるだけでガスの直撃をくらうのも油断ならない。それでも、火山の地熱からエナジーをいただけるスポットが近場にあるのはとても貴重だ。
ここから湧き出るお湯でゆで卵を作って売っていたおじさんが実は暴力団員で、なかなかのシノギになっているという噂が昔からあり、それが実話だったことが、しょっぴかれたというニュースで明らかになったときはちょっとフフッとなった。正規のゆで卵は山麓レストハウスで食べられるので、そちらでどうぞ。
来た時には、「暑い日に何をやってるのか」とは思わなかったけど、暑い日に何をやってるのか。

湧き水

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屈斜路湖摩周湖に挟まれた国道391号線を行くと、美留和(びるわ)に、摩周湖の伏流水が飲める場所がある。摩周湖の水は自分好みの軟水で美味しく、滞在中も絶えず車が出入りしていた。ポリタンクで汲んで持って帰るのを一度やってみたいけど、冷蔵庫に入らないので小分けで何本かがいいとこかなぁ。この水でコーヒー淹れたら絶対美味しい。

弟子屈ラーメン

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新型コロナウイルスの流行下で外出外食を控えるようになったのを機に、自炊でちょっと凝ったものを作るのが楽しくなってきたのもあり、すっかり外へ食べに行くということをしなくなってしまっていた。そういうわけで2月を最後にずーっと外食していなかったので、実に半年以上ぶりの外食。ラーメン屋はお正月の麺初め以来なのでさらにご無沙汰。
川野泰周さんの『「精神科医の禅僧」が教える 心と身体の正しい休め方』で読んだラーメン瞑想を実践してみようと、見た目、湯気の湿り気、箸上げの感触、スープの熱さと複雑な塩気と甘み、麺の歯触り、喉越しなどなど、丁寧に味わってみる。味わっているうちに、気が付けば普段飲み切らないスープもきれいに無くなっていた。恐るべしマインドフルイーティング。単に久しぶりで美味しすぎたのかも。

近くへ行った

入口に置いてあるアルコールのポンプや、ほとんどの席に置いてあるアクリル板のついたてといったものが目につく一方で、回転のいい、ほぼ満席状態のお客さんの入りや、テーブル席の笑い声に触れると、緊張感はキープしながらも、人の流れは戻ってきつつあるんだなと感じる。現在、積極的に外食に行く人とそうでない人との割合はどんなもんなのだろう。ぼくは自分がしっかりしていても、完全には周りを信頼しきれていないため人混みを避けるタイプ(いざ言葉にするとひどい)なので、まだまだ後者のほうだけれど。